2020.1.26 セリエA第21節 ローマダービーから学ぶガンバの方向性

戦術分析

 

本年も1月が終わりアッという間に2月ですが、2020年最初の投稿はなんとローマダービーのレビューになりました。自分でびっくり。皆様いかがお過ごしでしょうか。ひたすらサッカー戦術インプットの日々を送っているイチイキです。

最近はろくにブログの更新もせず、ツイッターにも投稿せず何をしていたかというと、サッカー関連書籍を読み漁り、毎日欧州の試合を1試合観る生活をしていました。知識を仕入れて、実際のピッチ上を観察して、また仕入れての繰り返し。一気に目の前が開けるような感覚はまだありませんが、少しずつ現象を理解できるようになってきている気がします。今シーズンのガンバレビューは、もっと戦術的に踏み込んだ内容にレベルアップさせていきます!ので今年もどうかよろしくお願いします。

 

目次は以下のとおり。

試合の全体的なレビューではなく、気になった点をピックアップして解説したいと思います。レビューの目的はあくまで「ガンバの参考にする」なので。ラツィオの気になった点から、来季のガンバにも言及したいと思います。

ではでは!

はじめに

さて、今回はセリエA第26節のローマダービーをレビューします。そもそもローマダービーって何なんだ、という方向けにwikiの冒頭部分を引用しておきます。

デルビー・デッラ・カピターレ(Derby della Capitale)は、イタリアローマに本拠地を置くASローマSSラツィオの間で行われるサッカーの試合のことである。(中略)英語ではローマ・ダービー(Rome Derby)と表される。イタリアにおける四大ダービー(他はミラノ・ダービートリノ・ダービージェノバ・ダービー)のひとつであるが、ミラノ・ダービーやトリノ・ダービーを凌ぎ、イタリアで最も激しいローカル・ダービーである。地元ではこのダービーが「試合以上の存在」と言われる。

デルビー・デッラ・カピターレ - Wikipedia

 

ダービーが絶対に負けられない試合であるのは、ガンバサポーターならよく分かるはず。最近はそうでもないのかな?でも過去には過激な行為が頻発している“ヤバい”ダービーです。スタジアムも異様な熱気・狂騒に包まれます。今回はローマホームでした。

ちなみに僕が応援しているのはラツィオです。なぜかというと、約4年前にイタリア旅行に行った際、スタディオ・オリンピコで観戦して以来愛着があるからです。そのときはEL1回戦セカンドレグ・ガラタサライ戦(3-1で勝利)でした。元ドイツ代表のクローゼの途中出場からのゴールに感動したのを覚えています。ビジャレアルしかり、現地観戦すると愛着わくんですよね。ファンを増やすにはスタジアム体験が手っ取り早い。にわかファン。

 

とまあどうでもいい情報は置いといて、本題はレビューです。ラツィオのリーグ12連勝がかかっている、かつダービーマッチとあり、久しぶりに観戦に熱が入りました。ガンバを応援しているとき並みに。

それなのに、応援している肝心のラツィオが、なーんかいいようにローマにやられていたんですよね。それがなぜなのか、分析してみようと思い立ち筆を執った次第です。悪い時ほど原因を追究したくなるというアレです。

そして理由はもう一つあって、ラツィオの採用しているフォーメーションがガンバと同じ3-5-2(3-3-2-2)だということ。ラツィオを分析すればガンバの参考になるんじゃないか?と。試合前はサッカーキングの下記動画を観て、特に守備の部分でいいものが観れるかな~と考えていました。

 

ですが、ふたを開けてみると、反面教師の意味で参考になる試合になってしまいました…。3-5-2の弱点をバシバシ突かれて押し込まれる展開。かろうじて1-1のドローに終れたのはラッキーという他ありません。でもそれはそれで振り返る価値のある試合です。連勝は途切れましたが、上位のユーヴェ・インテルも足踏みしています。まだまだスクデット目指して突き進みましょう。

スターティング・フォーメーション

今回はこれまでのFootball Tacticsから替えて、▲ Jun Kanomataさんが開発しているTACTICAListaを試運転してみます。

(こっちの方が見やすいし使いやすい…!5レーンがデフォで入ってるし!たまに起こるバグさえなければ!)

ホームのローマは4-2-3-1で対抗。ラツィオと同じく今季継続している形です。ラツィオは先述のとおり3-3-2-2。先発は今季のベストメンバーで臨んでいます。ローマはケガ人も多く試合ごとにメンバーをちょくちょく替えている印象。

始めの立ち位置は上の画像のとおりですが、ラツィオがWBの上下動のみの可変システムなのに対し、ローマはラツィオの構造的弱点を突くために、最終ラインと中央の4人(CFジェコ、トップ下ペレグリーニ、CHクリスタンテ、ベルトゥ)が頻繁に立ち位置を変えていました。今回解説したいメインはその部分です。そこにラツィオがいいようにやられた理由があります。

試合の様相とハイライトを解説

  1. ラツィオはローマにバイタルとアンカー脇使われすぎ問題
  2. (自陣でのポジティブトランジション・ビルドアップ)GK含め最終ラインから繋ぐ意識の高いローマvs手っ取り早くロングパスを送り込むラツィオ
  3. (敵陣でのネガティブトランジション)ゲーゲンプレスのローマvs撤退守備のラツィオ
  4. ローマは撤退する場面が少なかった印象。確認したらローマのポゼッションは67%でした。やっぱりそうか。これはボールロストしてもゲーゲンプレスで奪回してポゼッションを回復できていることの表れですね。ちなみにシュート数は22vs6。よく1-1で終われたな…。
  5. 前線にボール入れても立ちはだかる防衛庁長官・スモーリング(命名は実況の北川さん)。勝率100%近いんじゃないか?というくらい鉄壁。ラツィオは押し込まれてるのに前線でも勝てないので、打開策が見いだせない状況でした。
  6. キレキレウンデル。彼がローマの右サイドの優位性を確立。
  7. ズバッと縦パス・クリスタンテ。2CHの一角だが実質アンカーの役割。ジェコの高さが活きた得点は彼のふわりパスから。
  8. コーナーキックからのナイスアシスト・クロスバー。この1点で勝ち点1を得られたのは本当にラッキー。

 

2と3は相互に関係しあっています。ラツィオはカウンターを志向しているのはありますが、ローマのゲーゲンプレス・ハイプレスにより、ロングボールを蹴らされていました。前線でプレスを仕掛ける分、ラツィオの2トップに対し、ローマは2CBの同枚数で守るリスクが発生する(一般的に守備側は、相手のFW枚数+1のDFを残す)わけですが、そこは防衛庁長官を筆頭に封殺していました。

逆にラツィオは2トップがハイ~ミドルプレスを仕掛けない(仕掛けられなかったの方が正しいかも。後ほど)ため、守備ラインを押し下げられるは、中盤が翻弄されるはで、なかなかペースを掴めません。ポジティブトランジションからカウンターに移行したい場面でも、縦パスの精度を欠き、なかなか前線に良い形でボールが入りませんでした。ローマのプレスにより陣形が崩されていたこともありますが、プレーのベースとなる緊張に打ち勝つ・力強く積極的に振る舞うといったメンタル面でも、ローマに分があったようにみえます。いつも観ている訳ではないので分かりませんが、連勝街道を邁進する「いつものラツィオ」を出せなかったのではないでしょうか。

しかし、メンタル面以上に試合の明暗を分けた(結果はドローですが、内容という意味で)のは、ローマのラツィオ対策がものの見事にハマったことです。見るからに対策を練ってきたなというのが分かりました。

対ラツィオのビルドアップ陣形

この試合を一言で表すなら「カウンターを狙いたいけど上手くいかないラツィオvsボール保持から狙い通り攻略していったローマ」といえるでしょう。ローマはラツィオの嫌なところを上手く突いていました。次の図をご覧ください。

この試合を通じてローマは「後ろの数的優位を確保 → 中盤の動き出しから時間とスペースを得た味方へボールを展開 → サイドアタッカーへ運び、仕掛けさせる」というお手本のような攻略方法をみせてくれました。

 

まずはローマの最終ライン。ボール保持時は左SBスピナッツォーラを高い位置に上げて、実質3バックの形でビルドアップ。ラツィオは最前線が2トップのため、後ろは3枚でも数的優位を確保できます。その上、押し上げたスピナッツォーラを監視するため、ラツィオの右WBラッツァーレはピン止めされ高い位置を取ることができなる。それにあわせて左SHのクライファートはインサイドレーンの2ライン間に位置取ることで、ラツィオ右IHサビッチの注意を引く。

逆にローマ右SHのウンデルはサイド目いっぱいの高い位置に張ります。これには2つの理由があって、1つは質的優位性(1対1で抜くことができる強さ)を生かしサイドから仕掛けさせるため、もう1つはラツィオの守備の基準点(特に左WBルリッチ)を乱すためです。

この状況を生み出すために一番を効果をもたらしていたのが、2CHクリスタンテとベルトゥが縦の位置関係を取ることでした。

ローマが最終ラインを3バックに変形させてきたため、ラツィオの2トップはプレッシャー掛けに行きたくても行きにくい状況にありました。しかもクリスタンテが常にラツィオ2トップ間に居座ることで余計に出て行きにくい状態。そうなると、右SBサントンがボールを持つと、ラツィオは左IHのアルベルトがプレスに行かざるを得なくなる。そこで待ってましたとばかりにアンカーレイヴァの脇で控えていたベルトゥへのパスコースが生まれます。このとき、左WBのルリッチはどこを監視すべきか判断の付かない状況に陥らされていました。

アルベルトが空けたベルトゥのカバーにいくのか、それとも後ろに控えるウンデルをマークするのか、そもそもサントンがボールを持たずに上がってくるのなら、ルリッチはそちらにも対応しなくてはなりません。結果、いずれにも対応できるようにするため、中途半端なポジションに。

結局、最終ラインから持ち出されたボールはベルトゥを経由してウンデルへ。ウンデルが1対1から突破できればそれでよし、できない状況であれば、主にベルトゥ・サントンがコンビネーションで絡み、右サイドを起点にチャンスを創出していました。

 

この攻略において、一番の鍵となっていたのが中盤3枚(クリスタンテ、ベルトゥ、ペレグリーニ)と、その動きに合わせてボールを受けられるポジションをとるCFジェコです。上の図で線を結んでいるように、中盤3枚は常に三角形を保ちながらラツォオの前線〜2ライン間のギャップに入る位置を取っていました。

他の配置のパターンとしては、

①トップ下ペレグリーニの最終ライン落ち

この形ではペレグリーニが空けたスペースをジェコが活用してウンデルへボールを渡す形。ペレグリーニは遊軍のように、下りてビルドアップに関与することでその安定に寄与するとともに、その空けたスペースがボールの出口として機能していました。

 

②中盤が初期配置に戻る

トップ下ペレグリーニ、2CHクリスタンテとベルトゥが横並びの初期配置の形です。適宜2CHが縦から横の並びに戻ることで余計にラツィオ側は捕まえにくくなります。

 

いずれの形にも共通しているのが、

  1. 右SHウンデルは外の高い位置に張る。
  2. 左SBスピナッツォーラも同様(左サイドにボールが回ってきたときは下りてビルドアップに関与)。1と合わせてラツィオのWBに高い位置を取らせないようにする。
  3. その上で、中央ラインの選手がポジションを入れ替えることでボールを縦に展開。サイドの優位性へ繋げる。

ということです。

では、ローマのボール保持に対し、ラツィオをどう振る舞うべきだったでしょうか?

ファーストディフェンダーの重要性と配置の柔軟性

考えられる方法は以下の2つ。

  1. ファーストディフェンダーを決める。
  2. 相手の保持時の配置に合わせて、こちらも配置を変える。

1について、最初に誰が、どのタイミングでボールホルダーにプレッシャーをかけに行くかという話です。この試合でいうなら、まず2トップが、相手のCBがボールを保持したときにプレッシャーをかけに行くべきでした。ローマは最終ラインにプレッシャーが来ないので、余裕をもって中盤へ縦に繋ぐことができていました。ラツィオは最初の牽制が無い状態で、IHが出て行ってしまうのでアンカー脇をいいように使われ放題。

ただし、上述のようにローマのCHクリスタンテが2トップ間に居座り、機をみてボールを受けようとするため、出るに出られない状態だっとことも確か。そこで必要だったのが2の「相手の保持時の配置に合わせて、こちらも配置を変える」です。

 

そもそも、ローマがラツィオ対策で配置を変えてきている時点で、さらにそれに対して配置を変える必要があったと思います。しかし、それができるほどラツィオは戦術的な柔軟性が無いのでしょう。これまで相手に合わせて配置を変えることはなく、先発メンバーも固定して戦ってきているので、上手く対策を取られたときの引き出しが足りないようにみえました。

ローマの最終ライン3枚に対し、ラツィオも同数でプレスをかけるなら、人選はおいといて理屈だけで言うと、4-2-1-3(最終ライン→中盤→前線へと1枚ずつ上げる)の形へと変化する必要があります。

でもやっぱり、ラツィオはなまじメンバー固定して戦っている分、理想論で終わりそうですね。

ここで言及したいのは、ずばり、ガンバであてはめて考えた時です!

ガンバのハイプレスは上手くいくか?

来季もガンバはこのラツィオと同じ3-5-2を継続するものと思われます。キャンプのTMも3-5-2が基本のようです。ということは、相手からすれば形が分かっているので対策を立てやすいということ。特に、3-5-2は押し込まれたとき実質5バックの5-3-2に変形してしまうため、中盤が3枚の間を狙われやすい構造になっています。弱点が最初から分かりやすいということ。

ここを狙われたときに、守るために重要なのが上記2点の流れ。昨シーズンのガンバについていうと、FWがあまり守備をしないため、上記1のファーストディフェンダーが決まらないという問題を抱えていました。

 

今キャンプの報道情報によると、前からのハイプレスに取り組んでいるとか。それが形になるのであれば、押し込まれて5バックで守備をする回数は減らせるでしょう。

そこからさらに予想される課題は、相手がガンバの配置・ハイプレスに合わせた配置に変更し、プレスを空転させる対策を取ってくること。そこで重要になるのが、相手の対策の上を行く対策、つまり上記2の配置を柔軟に相手に合わせて変えられるかということです。

キャンプのTMでは4バックにもチャレンジしているとありました。3バックか4バックのどちらがガンバに向いているのかという話ではなく、どちらも臨機応変に使いこなせる必要があるので、キャンプで試すのは大賛成です。結果負けていようが、今の時点ではかまいません。むしろ今試して負けておかないと、課題が分からないままです。負けたからといって悲観する必要はなく、これからポジティブな方向にいくらでも持っていくことができます。

さらに重要なのは、4バックをベースに中盤~前線の配置も柔軟性を持たせられるか。単純に4-4-2にこだわる必要はありません。というか、ハイプレスを仕掛けるのであれば、前線の枚数の流動性は必須なのではないかと思います。

ポジションにタスクが規定されるのではなく、各選手のタスクによって配置を決めて行けるかどうか。ハイプレスがシーズン通して成功するかは、ここに懸っているでしょう。まあそもそも、ベースの3-5-2からのハイプレスをモノにできるかどうかという問題はありますが。そこは強い意志を持ってやり通してほしいと思っています。ハイプレスに取り組む方向性自体は間違っていません。自分たちのスタイルをやり抜けるかどうかが、きっと最終順位に表れてくるでしょう。

おわりに

ラツィオがんばれ!まだまだこれからや!とそっと応援しておきます。3-5-2の可能性をもっとみせてくれることを願っています。

欧州のサッカーを観ていると、そう多くはありませんが3-5-2の形を採用しているチームがたまにあります(相手に合わせて3-5-2を採るチームもありますが)。たとえば今季のインテルはコンテ監督のもと、お得意の3-5-2で、2020/2/2時点リーグ2位につけています。そして今回取り上げたラツィオは、インテルに次ぐリーグ3位です。上手く機能させられるのであれば、3-5-2は十分に上位を狙えるフォーメーションといえそうです。

もちろん抱える選手の質にもよりますが、ガンバはその点十分なはずです。特に攻撃面のタレントはリーグでも上位に入るでしょう。そこでやはり鍵になるのは、来季からの継続と、そこからの発展です。その発展の方向性がハイプレスというわけですが、これが成就するかが来季の焦点になりそうです。

試合を観ていない今の時点で不安を抱えることには意味がありませんので、期待を持って来季の開幕を待ちましょう。きっとそこで一定の回答をみせてくれるはずです。シーズン開幕が待ち遠しいですね!

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