2020 J1第1節 横浜F・マリノスvsガンバ大阪(1-2)○ 多彩な変化、臨機応変に。

戦術分析

 

待ちに待ったJ1開幕や!今季こそはスタートダッシュいくで!!

 

と言いつつ、「去年の優勝チーム相手やしな…ただでさえ開幕苦手やのに、鬼門アウェイ日産スタジアムやで…不安しかない…引き分けでも御の字ちゃうか…」と内心思っていたそこの貴方、勝ったで!!

 

ガンバは実に9年ぶりに開幕勝利を飾ることが出来ました。

そして!遠藤保仁選手、J1最多出場タイ記録・631試合出場おめでとうございます!次のリーグ戦で記録更新のお祝いができることを願っています。

 

サポーター心理では、期待と不安の両方が入り混じる開幕前。

今季のガンバのオフシーズンにおけるキーワードはハイプレスでした。本当にそれが実るのか?開幕前のルヴァンGL柏戦で疑問に思った方もいると思います。それがリーグ開幕戦で実現できるだろうか?ましてや昨季王者相手に、と。

 

結論からいうと、ハイプレスは実りました。ただし、思い通りとはいかず、部分的な成功といえます。正直、プレスを剥がされる場面も散見されました。改善の余地はたくさんあると思います。それでも、今回勝利に結びついたのは、王者相手に臆することなく、キャンプから取り組んでいた成果を出そうという姿勢を表現できたからです。

 

試合後の選手・監督コメントから、今回の戦い方は対マリノスであることにアクセントが置かれていましたが、この戦い方が実現できたのは、昨季をベースに積み上げてきたから。具体例を挙げると、4バックと3バック(5バック)の使い分けです。現宮本体制の下、どちらにも取り組んできたからこそ成った戦術です。状況に応じた立ち位置を、自分たちで考えて実行することができた。薄氷の勝利で課題は多く残りましたが、そこは大きな収穫でした。

 

 

スタートのフォーメーション

マリノスは昨シーズンから変わらず4-2-3-1のマルコスシステム。CBはケガの畠中に代わり伊藤が先発。左ウイングには遠藤渓太が入りました。

一方のガンバ、困惑のスタメン発表・入り乱れる予想フォーメーション。FWが宇佐美1人?MF多くない?オ・ジェソクはSB?CB?と、どんな配置で来るのか予想が付きません。

継続して3-5-2なのか?それとも4バックで4-1-4-1か?4-4-2もある?

 

結果的には、上の画像のように4-1-4-1が適当かと思いますが、人によって意見が異なりそう。これはあくまでスタート時の配置であって、試合中は相手の動きに応じて立ち位置を頻繁に修正していました。なのでここを議論するのはあまり意味がありません。

注目すべきは、選手に与えられた役割(相手の誰とマッチアップするか)です。

 

スタッツから伺えるガンバの基本姿勢

まずは、この試合の両チームスタッツを簡単にご紹介。

横浜FMG大阪
20シュート10
4枠内シュート6
764パス283
83.80%パス成功率65.70%
65.60%ポゼッション34.40%
117.612km走行距離121.075km
190スプリント218

 

ポゼッション低っ!パス数・パス成功率も低っ!こんな数値はガンバで長らく見てないわ…。

・「走るマリノス」に走り勝つガンバが観れるなんて…(涙)後半は走らされてたけど。

という印象です。これにはマリノスのスタイルと、それに対するガンバの基本姿勢が影響しています。

 

【ポゼッションの低さに関して】

・自陣の低い位置では無理に繋がない(目的:マリノスのハイプレスを避ける)

・裏を狙えるなら積極的に狙う。短く繋ぐことに拘らない(目的:マリノスのハイライン守備を逆手に取る)

・攻め込まれたらセーフティにクリアし守備ブロックを作り直す(目的:マリノスのハイプレスを避ける、相手前線のアタッカーにスピードに乗った状態でプレーさせない)

⇒総じて、ボール保持には拘らない、相手へのリスペクト・割り切りの姿勢。ボール非保持時に勝負をかけた試合といえる。

 

試合後の選手コメントから、これが本来の自分たちのスタイルでないことは自覚しており、もっとボールを握って試合を支配したいとは考えているものの、マリノスを最大限リスペクトして勝ちに行った試合であることが伺えます。

ただし、何から何まで相手に合わせるのではなく、自分たちが新たに目指すスタイルと、マリノス対策の方向性を合致させて勝利できたことはポジティブな点といえそうです。

 

前半①:ハイプレスからのチャンス創出

と書いたものの、実はハイプレスを発動できる場面は多くありませんでした。後ろが連動できない場面では撤退も選択しています。キャンプ時から「90分間続けるのは無理」との選手コメントもあります。適切に使い分けるのが今季ガンバの目指すところ。

 

そもそも、ハイプレスを発動できる場面は限定されます。ハイプレスの目的は、文字通り高い位置・ゴールに近い位置でプレスを掛けることでボールを奪いチャンス・ゴールに繋げること(ショートカウンター)、あるいは余裕のない状態に追い込み、苦し紛れのロングボールを回収し、敵陣でのポゼッションを築くことにあります。いずれも相手陣内で相手がボール保持することを前提としています。試合を通じてガンバが敵陣内でプレーする時間は多くなかったので、ハイプレスを発動できる機会が少なかったのは必然。

 

ただし、ハイプレスを目的に、攻め残りの枚数は明確に意識していました。特に相手GKまでボールが下がったときと、ゴールキックの場面。いずれもDFラインの4枚を残し、中盤~前線の6枚で相手のビルドアップ隊の6人+GKを捕まえにかかっていました。

 

上は前半7分の場面。GKからショートに繋いでいくマリノスのスタイルを逆手に取り、ボールの出だしからプレスを掛けることでミスを誘発し、GKからボールをかっさらってゴール!できたのが前半6分の1点目でした(上の画像と違い、CB伊藤にプレスをかけたのは矢島で、宇佐美の位置にいた倉田が得点)。

 

しかし、ハイプレスはリスクと表裏一体です。前に人数を掛ける分、後ろが手薄になります。ガンバDFラインの4枚に対し、マリノスは3トップ+マルコスで4枚と数的同数。ここにロングボールを入れられて競り負けると、一気にピンチに陥ります。が、マリノスはあくまで繋ぎ倒したいのか、長いボールを蹴ってくることはそれほどありませんでした。

 

ただし、マルコスはハイプレスの裏・DFラインの前で受けられる、いやらしい位置取りをしてきます。7分の場面ではGK→ティーラトン→マルコスと繋がれます。そこで自由にさせない守備ができていたのはポジティブな点です。具体的にいうとCBが前に出て捕まえる守備です。ここを封じることができれば相手を押し込む時間が長くなる…のですが、上手くターンされてかわされ、結局DFライン裏を狙われてピンチを招いたのがこの場面のオチ。もう一歩早く出ることができれば、捕まえきれたかもしれません。それがハイプレスと後ろの連動の難しさです。

ここを極めることができれば、ガンバはもう一段階上に行けます。リスクを上手くカバーできるか、今後注目していきたいポイントです。

 

一方で、肝心のプレス隊について、正直即興の側面が強いなと感じました。最低限、「前6枚で連携して嵌めにいく」、「行くときは後ろのリスク受け入れてとことん行くぞ、ついて来い」という決め事はありますが、誰が最初にプレスに行くかバラバラですし、そもそも前6人の配置も流動的です。流動的な攻撃を是とするガンバなので、らしいといえばらしいのですが。逆に理にかなっているのか?流動的に奪い、流動的に攻める、これぞガンバイズム。

今季始まったばかりなので試行回数が少ないし、次の試合以降も要チェックです。

 

前半②:リトリート時の可変守備

相手がミドルサードで保持したときの基本的なマッチアップは以下の形です。

 

前半の守備陣形は4-5-1か5-4-1(押し込まれたとき)です。

可変のトリガーは相手左サイドのティーラトンと遠藤渓太の立ち位置。それに応じて小野瀬が2列目か3列目か決まります。ティーラトンがインサイドレーンの高い位置に進出する場合は、マークを受け渡して5バックで対応していました。基本は4バックで守りたいけれど、「左サイドに人数かけてくるなら付き合うよ、俺WBもやってきたから(小野瀬)」と、相手へのリスペクトと自信を覗かせます。最終ラインに危険なスペースを生じさせないよう、さらには後ろの数的優位を確保するために、常に位置を調整していました。

 

また、この戦術が成り立ったのは、SBでもCBでも守備強度を保てるオ・ジェソクがいたからこそ。帰ってきてくれてありがとう。今後も戦術に幅をもたらしてくれそうです。このような役割を高尾は担えないのかな?とは気になりますが。WB起用で考えているのでしょうか。

逆に相手右サイドに対しては、ガンバ左サイドはマンマーク気味で対応。可変する右サイドとは対称的にマッチアップをはっきりさせていました。

 

各報道によると、神出鬼没な動きをするマルコスに対応するため前半28分、遠藤からツネ監督に対し、井手口を一列(0.5列?)下げて2ボランチに変更するよう進言があったとか。これはポジションチェンジというよりは、タスクの変化だと考えます。なぜならブロックを組んだときはすでに、2ボランチの並びになることがほとんどだったから。「やっかいな動きをするマルコスは1人ではなく、2人で監視する意識に切り替えよう」というところでしょう。

 

この試合でもう一つ特筆すべきは、ブロック守備時のプレッシングです。DFの4枚を除いた前5枚で絶えず相手に制限をかけるプレスを実行(右の松原は倉田が常に監視)。前半は、危険な中央のゾーンにボールを容易に入れさせない守備に成功していました。

FWを一枚減らして中盤を厚くした意図はここにありそう。後述しますが、交代で入ったアデミウソンはやはり押し込まれたときの守備の振る舞いに課題があります。

 

ガンバは相手の特徴を逆手にとって追加点を奪い、前半を2-0で折り返す。2点目は明らかに狙ってやってますね。ここからも徹底したマリノス対策を準備してきたことが伺えます。

 

後半①:立ち上がりは4-4-2で。右サイドを支える小野瀬

後半開始早々のオ・ジェソクのミスから決定機を作られますが、オナイウのシュートミスに助けられます。サンキューアッド!

最初の選手交代が起きる後半65分までは、ガンバは矢島をトップに押し上げた4-4-2でマリノスに対抗します(左のティーラトンが上がってきたら5-3-2)。

ハーフタイムにどのよう指示があったは分かりませんが、後半も高い位置から奪いに行くことを目指して、矢島と小野瀬に高い位置を取るよう指示したのではないかと推測します。

 

この試合、小野瀬は影のMOMだと思っています。なぜなら、状況に応じてDF・MF・FWのどのラインにも参加して役割を遂行していたから。後半は時間が経過するにつれ、攻撃参加しても普段のキレがみられませんでしたが、それもそのはず。走り続けることだけでなく、適切な位置を取るための認知にもエネルギーを割いていたため、余力が足りなかったから。対マリノス戦術を遂行するために小野瀬の役割は欠かせませんでした。

 

さて、小野瀬が高い位置を取ると、その分裏にスペースができるのは自明の理。ということで相変わらずいやらしいマルコス(褒め言葉)がそのスペースを見逃すはずがありません。たびたび侵入してきてはボールを受け、ガンバ右サイドの裏に走り込む遠藤・オナイウ目がけてボールを入れてきます。ときには自らゴールに向かって持ち運ぶシーンも。それでもなんとか運動量でカバーしていたガンバ右サイド。しかし、マリノスが次々に攻撃的な交代カードを切ってきたことで、より自陣深い位置でのプレーを余儀なくされていきます。

 

後半②:両チームの交代カードが与えた変化

65分マリノス:MF喜田 → FWエリキに交代

 

この交代によりマリノスは中盤逆三角形の4-1-2-3に変化。対するガンバはアンカーの扇原を矢島が捕まえる4-4-1-1に変化させます。

エリキはスタートの位置こそインサイドハーフでしたが、積極的に前線中央に攻め上がってくるので、実際は4トップに近い形。それによりガンバDFラインに対し圧力を強めます。それに加えて疲労が蓄積し始めたのか、ガンバはポジティブトランジションからカウンターに移行してもDFラインを押し上げられず、縦に間延びし始めてしまいます。結果、相手陣内でのボールロストから、間延びして空いた中盤のスペースをマルコスに使われ、すぐに相手に流れを戻されてしまうことに。

 

70分マリノス:DFティーラトン → DF高野に交代

この交代により、相手左サイドはさらに活性化。小野瀬がDFラインに下がる回数が増えます。さらにはガンバ全体に疲れが出始め、前へ繋ごうとするもままならず、押し込まれる時間が増えていきます。マリノスも左サイド偏重だったボール保持に変化を加え、逆サイドにもボールを運び、ガンバ守備陣を横に揺さぶるように攻めてくる。後半74分、DFライン前・中央でわずかな時間を得たマルコスに見事な反転シュートを決められ、スコアは1点差に。

 

75分ガンバ:MF矢島 → FWアデミウソンに交代

失点直後にガンバはアデミウソンを投入。その前からアップを始めていたので、失点による交代ではありません。彼を投入する意図は2つ。

1.前線で時間を作ること。

2.スピードを生かして裏に抜け出すこと。

1について、調子がいいときのアデはトリッキーな形でボールを収めてくれます。逆にそうでもないときは不用意にボールロストします。この試合ではどちらかというと後者のアデ。

2については一定狙い通りに貢献してくれました。少し得点の匂いが増えたと思います。

ただやっぱり守備面が…。先発ならまだしも、後半交代投入であればもっと守備にも奔走してほしいです。するときはするんですが、ムラッ気があるんだよなあ…。それを承知で投入するのだから、あくまで攻撃的に行くぞというツネ監督のメッセージなのでしょうか。

 

82分ガンバ:MF倉田 → MF福田に交代

ここの交代は正直あまり意図が読めません。疲労を考慮してのことだと思いますが、それなら先に宇佐美では?と思っていたので。マリノスが左サイドの元気な高野の活用に偏重していたこともあって、あまり印象に残るプレーはみせられませんでしたが、保持したときの押し上げには一定寄与していたものと思います。あとは気持ちの強さを見せてくれます。 はっ!メンタル強化を狙ってか!?

 

86分マリノス:MFマルコス → エジガルに交代

 

さらに攻勢を強めるマリノス。もう実質5トップだよ…。ということで、最後まで乗り切るため、ガンバも小野瀬がべた引きで5バックに。

ここは正直、マルコスが残ってた方がイヤだった。ガンバDFサイドからすると、割り切って5バックの方が守りやすいし、一列下でマルコスにうろちょろされる方がやっかいだったと思います。

 

90分ガンバ:FW宇佐美 → FW渡邉に交代

遅くないですか?というのが正直なところ。

ガンバはずっと苦しい時間が続いていたので、前で時間を作って後ろの助けになれる千真の投入はもっと早くすべきでした。本人もあと4分で何せえっちゅうねんと思うでしょうし。

結局ベンチ入りで出場がなかったのが、FWパトリック、MF奥野、DF新里、GK一森でした。奥野はみてみたかったですね。点差に余裕があれば出していたのでしょうか。「井手口2世」といわれる彼がどこまでやれるのか興味深いです。

 

両チームとも交代カードを使い切り、迎えたアディショナルタイムは4分。藤春のゴールライン上ハンドぎりぎり・太ももシュートブロックなど、気を抜けない展開が続きますが、最後まで耐え凌ぎタイムアップ。

ガンバは9年ぶりの開幕勝利!

 

今節は最上のリスペクト。次節以降の基本スタンスは?

最後まで心臓に悪い展開が続きましたが、先行逃げ切りで貴重な勝ち点3を獲得することができました。同点にされていてもおかしくなかったのですが、今節に懸ける選手たちの思いがそれほど強かったのだと思います。ツネ監督の交代カードからも、あくまでも攻めに、絶対に勝ちで終わらせるぞという意志が伺えます。

 

勝ちにこだわるため、昨季王者に最大限のリスペクトを払い、できる限りの対策を施してきたガンバ。その内容は、相手に合わせて臨機応変に、多彩に立ち位置を変化させるものでした。

ただし、これはあくまでマリノス対策であって、これまでガンバが頑なにこだわってきたポゼッションすらも、状況に応じて割り切り、放棄するものでした。

 

本当は監督も選手たちも、自分たちがボールを握り、試合を支配するスタイルを構築したいと考えているはずです。

次節以降、ガンバの目指すスタイルを構築していけるのか?ハイプレスのインテンシティを保っていけるのか?

そして、この試合でみせたように、相手に応じて臨機応変に、自分たちの立ち位置を変化させていけるのか。今度はよりポゼッションを高めた状態でみせてくれることを期待しています。

 

Jリーグ中断はショッキングで寂しいニュースですが、その間にケガ人が帰ってくるはずです。ニューフェイスの登場を楽しみに、再開を待ちましょう!

 

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